「畳の表替え」に1日密着取材!見学レポートをご紹介!

今回は埼玉県川口市にある工場で畳の表替え作業を見学してきたので、その模様をご紹介します。
工場を訪れたのは夏真っ盛りの8月。そこには汗を流しながら作業を行う職人さんの姿がありました。

1日かけて現場を密着取材し、日本の伝統を大切に受け継ぐ職人さんの手仕事に触れる貴重な機会。今回は古いゴザを剥がす作業や、新しいゴザを張る作業の体験もしてきましたので紹介いたします!

畳の表替えとは

畳の表替えとは古くなったゴザと縁を張り替えることを言います。畳の芯の部分に当たる畳床は変えずに再利用します。天然のイ草でできた昔ながらのゴザをはじめ、汚れに強い樹脂製や和紙製のものなど、様々な素材・色の中からお客様のご希望に合わせてお張替えをします。ゴザと縁を完全に新しいものに取り換えるため新品同様の状態になります。

流れの説明

お客様のご自宅から引き上げた畳は工場に届けられ、納期が近いものから表替えを行います。納期がまだ先のものを表替えしてしまうと、お客様のご自宅に納めるまでに日焼けしたり傷んでしまったりする可能性があるため、お納めする直前に表替えを行います。

畳の表替えは次のような手順で行われます。

①採寸・・・引き上げた畳のサイズを測定する
②ゴザと縁を剥がす
➂床の補修や調整
④框縫い・・・畳の短手側を縫う
⑤ヘリと下紙を機械にセットする
⑥平刺し縫い・・・セットした縁と下紙を畳表に縫い付ける
⑦ゴザをカットする・・・余分なゴザをカットする 
⑧隅止め・・・畳の角を作る
⑨返し縫い、折れ筋を均す・・・縁を床に縫い付け、表面に霧吹きをして黒い筋を均す

見学レポート

①採寸

畳の表替えはまず、客様のご自宅から引き上げた畳の採寸から始まります。畳を戻す際に 隙間なくぴったりと敷くことが出来るよう機械を使って畳の幅を計測し、データを機械に転送します。仕上がりのサイズが少しでも違ってしまうと納めた時に隙間が出来てしまったり、無理や り畳を入れると撓んで中央が盛り上がってしまう可能性があるため、素早く正確に行います。

⇩コードレス畳検寸器「検助(けんすけ)Ⅲ」を使って採寸します。

②ゴザと縁をはがす
次にカッターを使い、糸やヘリに歯を入れながらゴザと縁を剥がしていきます。畳床はそのまま使用するので、傷をつけてしまわないよう注意が必要です。

カッターを使ってゴザを剥がす作業を体験しました!

床を傷つけないようにと慎重になりすぎると全く切れないし、力を入れすぎると勢い余っ て畳床を傷つけてしまうので、力加減が難しい作業でした。
職人さんは素早く滑らかにカットしていましたが、素人がやると途中で何度も「ガッガッ」とつっかえてしまい、カッターを使うことすら一苦労。。。


➂床の補修や調整を行う

新しいゴザを縫い付ける前に、経年劣化による畳床のへこみなどを調整します。家具の重みでへこんでいる部分は、イ草の束やゴザを仕込んで段差を埋めます。また、畳は使っていくうちに乾燥で収縮し、畳と畳の間に隙間が出来てしまうことがあり ます。このような場合、ご自宅から畳を引き上げた人からの指示を基に、納めた時の隙間 が無くなるよう調整します。

例)畳の側面にゴザを1枚仕込んで横幅を調整します。こうすることで若干ですが、ゴザの厚み分畳の幅が変わるため畳をお部屋に戻したときに隙間が埋めることができます。

調整が済んだら古いゴザと縁を剥がし、畳床の調整が済んだら畳床の上に新しいゴザをおいて次の機械にセットします。畳を使うお客様のことを第一に考え、目視では全く分からない少しのへこみも丁寧に調整されていました。

⇩畳の角が若干へこんでいたため、イ草を数本並べて段差がなくなるよう調整しています。


⇩引き上げた時に畳同士の間に隙間ができてしまっていたため、短手側のゴザを剝がさず に付けたままにすることで横幅を調整します。

④框縫いをする

框とは、畳の短手側のこと。つまり框縫いとは、畳の短手側を縫うことをいいます。機械を使って框にゴザを縫い付けていきます。この時、短手側の余分なゴザはカッターでカットします。イ草がポロポロとほつれてしまわないようカットした部分は接着剤で固めます。重たい畳を持ち上げて機械にセットしてからゴザの切り口を接着剤で固めるまでの工程を素早い手つきでサササっとこなす姿は見ていて気持ちが良かったです!

⇩短手側の余分なゴザをカット

⇩端はほつれないよう接着剤で固めます

⇩框(畳の短手側)を機械で縫い付けます

⇩端を接着剤で固めないと下の様にぽろぽろとほつれてしまいます。

⑤縁と下紙を機械にセットする

新しい縁と下紙を機械にセットします。下紙は縁に張りをもたせるために付ける厚紙のようなもののことを言います。縁は柄によって織り方が違うのでしなやかさも様々。そのため縁の柄を変える度に機械への通し方を変えて張りが出るよう調整します。

⑥平刺し縫い

最初に寸法を測った際のデータを基に、適当な場所に縁と下紙を縫い付けていきます。縁を付ける際は、隣り合っている畳同士の目の並びと縁の位置が揃うように調整します。調整することで、お部屋に収めた時に畳の目が一直線に揃っていて美しく見えます。

⇩畳の目が一直線に揃っている

⑦ゴザをカットする

 平刺し縫いをする過程で、機械が適当な位置に切れ込みを入れてくれます。その切れ込みに従ってカッターを使い余分なゴザをカットしていきます。

ゴザのカットを体験しました!

職人さんはまるで紙を切るようにスルスルとカットしていました。しかし素人が挑戦してみると、あらかじめ切れ込みが入っているとはいえ、真っ直ぐ切るのはなかなか難しかったです。ただ、何回かチャレンジするうちに歯の角度と力加減が分かってきて滑らかにカットできるようになりました!サーっと一発でカットできると気持ちいい!

⑧隅止め

縁と下紙を折り返し、タッカーで止めて隅を仕上げていきます。角を綺麗に出すのは熟練 の技で、この隅止めで仕上がりの美しさが決まるとも言われています。※表替えでは、元々の床角がつぶれていた場合、綺麗に角を出すのが難しいため厚紙など を挟んで潰れている部分を補強します。

隅止めを体験しました!

職人さんはまるで元から折り目が付いているかのように綺麗に角を作っていたのですが、やはり畳の美しさを決める重要な工程だけあって、ツルツルした分厚い縁を綺麗に折り返す作業はとても難しかったです。

折り返した縁を止める作業は「タッカー」と呼ばれる道具を使用します。造りは文房具のカッターによく似ているのですが、ずっしりと重いので使いこなすのに一苦労。。片手でタッカーを持ち、反対の手で縁を抑えるのですが、タッカーに気を取られて縁がズレてしますこともしばしば…何度もやり直して縁がタッカーの穴だらけになってしまいました泣

↓角がつぶれていたため、下紙を挟んで補正



⑨返し縫い・折れ筋を均す

縁を機械で縫い付け、仕上げに畳の表面に霧吹きをかけ折れ筋を均します。「折れ筋」とはゴザの表面に見られる黒い筋のことをいいます。ゴザは折りたたんだ状態で保管するのでどうしてもイ草とい草の間に隙間ができ、これが 黒い筋の様に見えてしまうことがあります。折れ筋を均すために霧吹きを使用する理由は、水分を含んだイ草が膨らむことで、イ草同 士の隙間がなくなり筋が目立たなくなるためです。折れ筋は使っていくうちに目立たなくなるものですが、より美しい状態でお納めできるよ うにと、目視では確認できないほど細かい筋も調整されていました。


⇩折れ筋

⇩霧吹きで水をかけて折れ筋を均します

表替え完了
お部屋ごとにまとめて積み上げ、保管します。

⇩職人さんは30キロ近くする重たい畳も軽々担いでいました!

まとめ

今回工場を見学して感じたことは、職人さんたちは日々畳をお部屋に収めた時の「美しさ」やそこに住まう人の「快適さ」を追求しているということ。1日に何百枚もの畳の表替えを行う現場で、スピードだけでなく畳1枚1枚と向き合いながら作業をする姿に職人さんの畳に対する熱意を感じました。

畳のミカタ.comでは畳のスペシャリストが暮らしに寄り添った畳のある暮らしをサポート。快適な暮らしのためにこだわりの詰まった上質な畳をお届けいたします。

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