襖の基礎知識を学ぼう!「襖の構造・名称について」

和室と言えば、「畳」と同じくらい有名なのが「襖」です。
皆さんは「襖」と聞いた時にどのようなものを思い浮かべますか?

そもそも襖とは平安時代頃に誕生し、発展してきた伝統文化のひとつです。
実は、襖も畳と同じように、さまざまな部品が合わさって作られているんです。
今回はそんな襖の構造や役割、種類、大きさなどをご紹介させていただきます!

襖の構造と役割

襖とは、日本で伝統的な間仕切建具で、保温機能や調湿機能、室内の有害物質を吸収する機能があります。
基本的には、襖芯・襖紙・引手・縁の4つの部位から成り立っており、最近では材質やデザインが豊富になり、部屋の雰囲気に合わせて変えることができるようになっています。

また、中のものを湿気から守るために和室の押入にも使用されています。
季節によって温度に差がある日本にとって、最適な建具なのです。

襖の種類

実は襖にはたくさん種類があるのをご存知ですか?ここからは代表的な襖の種類を紹介していきます。

本襖

伝統的な襖で、現在でも代表的なもの。組子と呼ばれる細い木枠の上に、和紙を貼り重ねて作られています。
通気性が良く、反りやねじれに強いのが特徴ですが、複雑な構造のため量産が難しく、
他の襖に比べると高価
になってしまいます。

ダン襖

ダンボールを重ねたものを芯材としています。張替が困難で強度が弱いという欠点もありますが、
量産しやすくコストをおさえられるという強みもあります。近年では、個人宅で多く使用されています。

戸襖

組子の上にベニヤ板などを張り、その上に襖紙やクロスなどを張って作られる襖。
和・洋、和・和、洋・洋など、和室と洋室の境を区切る引戸として使用することができるのが強みです。

襖紙の種類

襖紙には「和紙襖紙」、「織物(天然素材)の襖紙」、「織物(合成繊維)の襖紙」、「ビニール襖紙」などといった、さまざまな種類のものが存在しています。
今回はその中の「和紙襖紙」の種類について詳しくご紹介していきます。併せて、その他の種類についてもザックリとご紹介させていただきます。

和紙襖紙

本鳥の子(ほんとりのこ)

機械を使用せずに作られており、襖紙の代名詞とも言われている伝統的な手漉き和紙です。
名前の由来は、植物の雁皮(がんぴ)から作られた雁皮紙の色合いが、鶏卵の殻の淡黄色に似ているところから鳥の子と呼ばれるようになりました。

本鳥の子の特長としては、紙自体がふんわりとして柔らかく、雁皮独特の柔らかい光沢もあり、丈夫さも兼ね備えているところです。かなり上質なので、超高級襖紙として扱われています
また、紙料によって、特号紙(雁皮紙)、一号紙(雁皮+三椏)、二号紙(三椏)、三号紙(三椏+パルプ)、四号紙(マニラ麻+パルプ)といったさまざまな種類が存在します。
(※三椏は雁皮と同じ、和紙の三大原料です。)

また、経年することで味のある変化をするため、新しいものより上品な肌合いになるのも大きな特徴としてあります。
ただし、施工に際しては上質なものほど紙の性質が強くなるため、下地骨・下貼りなどに充分な配慮が必要となります。

鳥の子(とりのこ)

本鳥の子が手漉きでつくられるのに比べ、鳥の子は抄紙機を用いて漉きます
紙料はさまざまで、本鳥の子と同様に靱皮繊維(雁皮や三椏)を使ったものをはじめ、パルプだけのものまであるのが特徴です。

上質なものは手漉きの風合いを作り出すために、とても緩やかな速度で漉いていきます。
そうすることで、繊維の絡みや紙の肌合いが手漉きに近いレベルとなり、均質さもあることから用途によっては、手漉きよりも好まれることがあります。

また、漉き染めした鳥の子(色鳥の子)は色数がかなり豊富なため、現代の住空間はもちろんのこと、商業空間にもよく使われています。

新鳥の子(しんとりのこ)

襖紙の中で最も安価で、製紙から模様付けまで一貫して機械で生産されているため、量産のしやすさと安価なところが強みの襖紙です。
新鳥の子は主に特殊な抄紙機で漉いた再生紙を用いて作られており、表面はパルプ(植物繊維)素材で滑らかなのに対し、裏面は再生紙の為少しざらつきがあります。

模様(絵柄)は一般的に使いやすいものが多く、施工がしやすいため、量産性と施工性の良さが相まって公団住宅・民間賃貸住宅などに最もよく使われています。

上新鳥の子(じょうしんとりのこ)

鳥の子の普及品で、紙はすべて機械漉き・パルプ100%で作られています。
比較的低価格で均質
という特徴を持っています。
鳥の子の肌合いを生かした無地、機械漉き模様、後加工による模様付けなど、和紙の襖紙の中では種類が最も豊富で、耐用年数も長く調湿性能にも優れています
これらの特徴から、一般住宅や集合住宅などによく用いられ、名称を略して「上新」とも呼ばれています。

他にも、和紙襖紙には、麻紙(まし)、楮紙(こうぞし)、本鳥の子漉き模様(ほんとりのこすきもよう)、鳥の子漉き模様(とりのこすきもよう)などの種類があります。

麻紙(まし)

麻を紙料として漉いた和紙で、書道用紙や日本画用紙として見直され、数多くの作家の作品に用いられています

楮紙(こうぞし)

雁皮・三椏とならぶ和紙の三大原料のひとつ。和紙の中で最も強靱かつ独特な風合いが特徴です。

本鳥の子漉き模様(ほんとりのこすきもよう)

すべて手漉きによって漉き込み模様をつけたものです。
手漉き独特の風合いを持ち、手漉きならではの高級感とボリューム感を表現することができるのが、本鳥の子漉き模様ならではの特長です。

鳥の子漉き模様(とりのこすきもよう)

本鳥の子漉き模様と同じような紙料を用いますが、下地を抄紙機でつくる分、コストを抑えることができるのが特徴です。
模様は手漉きのため柔らかな表現ができ、伝統的なさまざまな技法で多彩な模様が施されます。

織物の襖紙は、伝統的に用いられた天然素材のものと、主として合成繊維を用いたものとに大きく分けられます。
天然素材のものは主として、高級な無地として用いられますが、素材の性格上、合成繊維に比べて一枚ごとに織り上がりの風合いが違います。
この変化が天然素材の面白さといえます。

織物(天然素材)の襖紙

葛布(くずふ)

葛の繊維を横糸(緯糸)に用いて織ったもので、強靱で耐水性に富んでいます。
昔は縦糸(経糸)に絹や麻を使い葛袴などの衣料としても用いられましたが、その丈夫さと野趣に富む風合いから、襖紙、表装裂地、壁紙などにも使われています。古くから掛川(静岡県)でつくられています。

絹絓(きぬしけ)

繭の外皮から引き出したあら糸を横糸にした絹織物で、このため糸そのものの不揃いさや打ち込みの不揃いさが、独特の風合いをつくっています。また、さまざまな色に染められ、絹の柔らかな光沢を引き立てることができます。
絹絓には、手織りのものと機械織りのものがあり、昔は屏風などにもよく用いられたり、壁紙として欧米にも輸出されていました。

芭蕉布(ばしようふ)

本釆の芭蕉布は、縦糸に木綿や麻糸、横糸に糸芭蕉の繊維を用いていました。
沖縄を主産地とし、古くから貢納布として織られ衣料として使われてきましたが、その張りのある風合いから上質な襖紙としても用いられています。
現在はその風合いを麻糸などを用いて表しています。

シルケット

横糸を麻、縦糸を木綿で織ったもので、平滑で滑らかな風合いが好まれ、天然素材のものの中では最もよく使われてきておりました

織物(合成繊維)の襖紙

上級織物

織物の中では高品質なもので、施される模様(絵柄)も手加工による凝ったものが多く作られています
主としてドビー織りなど縦糸・横糸ともに糸目の詰んだ織物で、縦糸にレーヨン糸、横糸に木綿の意匠捻糸(スラブ糸、ネップ糸など)や絹などを用いて変化をつけます。

中級織物

一般的によく用いられる織物で、使いやすい価格と変化のある風合いが好まれています
縦糸・横糸ともにレーヨン糸がよく用いられ、最近では長繊維のレーヨン糸も使われ始めました。
模様(絵柄)は手加工のものを中心に、さまざまな種類のものがあります。

普及品織物

最も数多く用いられているもので、低価格と種類の豊富さを特徴とします。
主として縦糸・横糸ともにレーヨン糸(短繊維)が使われます。模様(絵柄)は、特殊な輪転・オフセット・スクリーン印刷機などで加工されるため、画一的で無難なものが多くなります。

ビニール襖紙

塩化ビニールなどの合成樹脂性の襖紙で、耐水性と汚れにくさを特徴とし、水回り、廊下側や洋間側によく使われます。模様は無地調のものが多くつくられています。

襖のサイズ

襖のサイズは、部屋の大きさによって異なり、サイズや設置する場所によって名称があります
襖の寸法を示す単位として、尺貫法(しゃっかんほう)が使用されています。1尺が約30.303cm、一寸が約3.0303cmです。

  • 標準サイズ:高さ180cm×幅90cm
  • 五八(ごはち):高さが5尺8寸(176cm)の襖。
  • 五七(ごしち):高さが5尺7寸(173cm)の襖。
  • 中間(ちゅうま):高さが3尺以上5尺まで(90cm~150cm)の襖。
  • 半襖(はんぶす):高さが2尺以上3尺まで(60cm~90cm)の襖。
  • 丈長(たけなが):高さが5尺8寸(176cm)を超える襖。
  • 幅広(はばひろ):幅が90cmを超える、横幅が広い襖。
  • 天袋(てんぶくろ):高さが40~60cmの襖。押入の上など、天井付近に取り付けられる。
  • 地袋(じぶくろ):高さが40~60cmの襖。床の間や仏壇の下など、床付近に取り付けられる。

一般的に使用される襖は、五八や五七ですが、丈長や幅広など大きめの襖や、天袋や地袋などの小さめの襖もあります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
皆さまがよく見る襖の中には、似たような見た目であったとしても、実は芯材や紙の種類が違っていたりしていて、本当に奥が深いものなのです

また、和室用に作られている従来の用途だけではなく、洋室用に作られている物も近年増えており、古くからある伝統文化が今の時代に合った形に生まれ変わっております。

そんな沢山の面白みと奥深さがある襖に是非興味を持っていただき、古くなっている物や壊れている物を新しい物に変えてみるのはいかがでしょうか?

今回は、かんたんな構造や襖の種類など、襖の知識の導入部分をご紹介しました。
今後は、より襖のことを知っていただけるテーマを紹介していきたいと思いますので、ぜひご期待ください!

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